チームでの会議のこんな開口一番を想像してみましょう。
今、何の仕事をしているのか、もう一度教えてくれる?
いら立ちを含む溜息と目配せが一斉に始まります。🙄
しかし、逃げ惑うばかりではいけません。チームとの会話やミーティングでも、退屈な進捗状況の報告以外のことから話し始めることもできるのです。いつでも全員が、誰が何に取り組んでいるのかをあらかじめ正確に知っているべきです。
それこそチームにとってベストと思えるなら、今こそカンバン方式を採用するべき時です。
カンバンは視覚的に仕事の管理や処理をする方法です。アジャイル開発手法をリードするアトラシアンは、「カンバンは仕事の可視化、WIP(進行中の作業)の制限、仕事の効率や流れを最大限に引き上げる方法であり、カンバンチームは、プロジェクトまたはユーザーストーリーの開始から完了までにかかる時間の削減に重点を置く」と説明しています。
トヨタの工場で考案されたカンバンのフレームワークは、その柔軟性と、チームがより迅速かつ効率的に働くことを可能にする点が評価され、アジャイルソフトウェア開発チームの間で人気となりました。
カンバンのコア原則は、ほぼ全ての業界に適用できるので、この方式がマーケティング、営業、採用、更にはビジネスオペレーションに至るまでの、様々な種類のアジャイルチームの間で人気となっているのも当然と言えます。
それでは、この革新的な方式や仕組みについて、そしてどうすれば自分のチームのプロジェクトにこの方式を応用できるかを詳しく見てみましょう。冗長な質問が減り、生産性が向上する方式を紹介します。
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What Is Kanban?
カンバンは現代でも幅広い分野で人気の方式ですが、その誕生は1940年代に遡ります。
このシステムは、日本のトヨタの技術者であり経営者でもある大野耐一氏が構築しました。大野氏は、トヨタとはまったく異なる業界、スーパーマーケットの品出しの方法から発想を得て、この方式を思いついたのです。
スーパーマーケットは、顧客の需要に見合うだけの商品を蓄えることで在庫の流れを管理します。トヨタには在庫量管理において似たような問題がありました。そこで在庫量を車の製造で実際に使う部品に合わせて管理するために「カンバン」を開発しました。
その仕組みは以下のとおりです。
- 工場の現場で働く従業員は、チーム間でカードを渡すことでリアルタイムでの生産能力を伝達します。
- 生産ラインで部品が無くなった時は、倉庫にカンバンを渡すことで、生産チームが何を必要としているのかを伝達します。
- 倉庫は、在庫を届けてくれる仕入れ先に何が必要か連絡し、その後で仕入れ先に戻します。
製造業に端を発するカンバン方式が、ソフトウェア開発チームに採用されるようになったのは、デビッド J. アンダーソン氏の著書「カンバン ソフトウェア開発の変革」によりカンバン方式が広く知られるようになったためです。アンダーソン氏はこの著書の中で、チームがよりアジャイルになるために、現存するプロセスの中にカンバン方式を導入する方法を説明しています。
ソフトウェアと製品の開発は、変化が激しく、常に変更を求められ、複数のイテレーションが存在するため、アジャイル開発の手法は、カンバンとスクラムの両方のフレームワークの指針になります。
アジャイル開発の手法は、管理と開発に体系的なアプローチを使う一連の規範と原則から成ります。アジャイルアライアンスによると、アジャイルとはアジャイル開発宣言で表明された価値観と12の原則に啓発されたマインドセットです。
「アジャイルとは、変化を作り、変化に対応する能力であり、不確実で波乱に満ちた環境に対処し、最終的に成功する方法です。」
アジャイル開発手法は、スクラムとカンバンを使って実践されます。この二つのフレームワークの原則は同じですが、実際にどのように機能するのかは異なります。
- カンバンは仕事を可視化し、WIPを制限し、最大限の効率化を図り、仕事の流れと質を絶え間なく改善するプロセスです。
- スクラムとは「スプリント」と呼ばれる設定された時間枠内で迅速に情報とフィードバックを集め、それを仕事に取り入れることを目標とする働き方です。
アトラシアン制作の便利なアジャイル コーチングガイドに掲載されている次のチャートは、カンバンとスクラムにおける仕事のやりかたの違いを明確に定義しています。
カンバン方式によるプロジェクトとタスクの整理法
カンバンは視覚的なワークフローなので、タスクの計画や追跡に、物理的なボードあるいはデジタルボードを使用します。カンバンボードは、カード、コラム、そして常に改善するというコンセプトを使って、チームを継続的に管理し、完了させる必要がある仕事に取り組ませます。
この手法の考案者の一人であるデビッド・アンダーソンが設定した、カンバンボードの構成フレームワークには5つの構成要素があります:
- 視覚的シグナル(通常はカード)
- コラムまたはリスト
- WIPの限度
- コミットするポイント
- デリバリーポイント
最も一般的でシンプルなカンバンワークフローは「To Do」、「進捗中」および「完了」と、プロジェクトの複雑さに付随して追加されるリストです。それでは、Trelloボードを使ったカンバンボードのそれぞれの要素を詳しく見てみましょう。
- バックログ:プロジェクトのタスクを個別のカードに分割したリストです。チームが取り掛かりたいと思うかもしれない、または将来的に取り掛かる必要があるものの、まだTo Doリストへは入れるべきでないタスクもこのリストに含まれます。
- 設計:バックログリストからカードを移動し、より具体化するスペースとして機能するリストで、進捗中リストに移動させる前に、チームがさらにリサーチや設計をする必要がある場合に使います。
- To Do:タスクが完全に具体化した時点でこのリストにカードを移動することで、チームに仕事に着手する準備ができたことを知らせます。この時点で、チームメンバーは自分が担当するタスクを割り当てられ、期限が設定されます。
- 進捗中:チームは自分のタスクに取り掛かったときに、カードをこのリストに移動します。チームの全員は、誰が何に取り組んでいるのかを一目で把握でき、Trelloカードのコメント機能を使って簡単にコラボレーションしたり、特定のタスクについて質問したりできます。
- レビュー/テスト: タスクがほぼ完了した時点で、レビューあるいは別の人による検査のためにこのリストに移動されます(上のテンプレートで使われた例は「Code Review」ですが、どの仕事のレビュー段階でも当てはまります)。
- Done: タスクがレビュー・承認されたら、このリストに移動します。可愛いパーティクラッカー「チームはタスクの目標を達成しました🎉」
注意点: カンバン方式の主な目的は、WIP(進行中の作業)を管理です。つまり、チームはどんなプロジェクトでも、1度に取り掛かるのは少数のタスクだけにすべきです。WIPを制限すると、チーム全体が完了にサポートや時間延長が必要なタスクを簡単に特定できます。これについて、アトラシアンのアジャイルコーチは次のように説明しています。
「WIPの制限は、チームを小さいタスクセットに集中させることで処理能力を改善し、『ほぼ完了』状態の仕事の量を減らします。WIPの制限は、基本的なレベルで『やり遂げる』文化を促進します。さらに重要なのは、WIP制限がブロッカーやボトルネックを視覚化してくれることです。
タスクやプロジェクト、そしてチームがよどみなく流れている状態(日曜日の朝のヨガの職場バージョンを想像してください)にするために、チームは次のようなTrelloのPower-Upが利用できます。
- リスト制限Power-Up: 特定のリスト内で使えるカードの数を制限できるPower-Upです。リストに加えられたカードが多すぎると、そのリストは自動的に明るく表示され、ワークフローの一部にボトルネックが溜まっているという視覚的な合図を全員に送ります。
- カードエイジングPower-Up: バックログリストにあるアイデアが多すぎる場合カードエイジングPower-Upを使ってボードにある休眠カードを簡単に見つけましょう。古くなったカードは外見が視覚的に変わり始めるので、引っ張り出してチェックする時だと知らせてくれます。
- 承認Power-Up: カードをいずれかのレビューリストに移動した時にこのPower-Upを有効にすると、マネージャーはボタンをクリックして、タスクを承認できます(そしてマネージャーがタスクを「完了」に移動すると、全員に通知されます)。
チームメンバーが特定の日の何時にどこで働いていようと、デジタルカンバンボードを使えば、誰でも簡単にすべての仕事の共有ビューにアクセスしたり、他のメンバーとコラボレーションしたり、重要なアップデートを提供したりできます。Trelloのカンバンボードは、カードへのコメントやファイルを添付するなどの機能により、「信頼できる情報源」としても役立ちます。
カンバン方式は、チームワークを高める最も生産的で柔軟性や透明性がある方法のひとつです。
非技術系でのカンバンの使い方5選
カンバン方式は、その適応性の高さから非常に期待できるワークフローです。工場で立案され、その後ソフトウェアの開発チームによって人気が出たからと言って、特定のタイプのチームやプロジェクトだけが、この方式をタスクの整理や仕事の遂行に使えるわけではありません。あらゆる人がカンバンを活用できます。実は、個人的なプロジェクトやタスクの追跡にも人気があります。
様々なタイプのチームや個人が、職場や家でカンバン方式を導入しているいくつかの方法を紹介します。
1. オンライン記事の配信
英国の新聞テレグラフのチームは、Trelloを利用してデジタルコンテンツのプロセス管理をしています。これは、企画から制作、そして配信までのワークフローを通じて、それぞれの記事を作成できるワークフローです。「To Do」、「進捗中」および「完了」のような通常のタイトルのリストはありませんが、カンバンのワークフローが、いかにチームの働き方に順応できるのかのすばらしい例です。
記事はボード上のカードとして制作され、調査、執筆、承認、配信という段階に応じて、それぞれのリストを移動します。例えば、カードが「コンテンツ制作済み」リストへ移動すると、法務チームはこの記事がレビュー段階だとわかります。
この配信プロセスボードは、テレグラフのコンテンツプロデューサー、制作スタッフ、編集者が、配信パイプラインにある全てのデジタルコンテンツの状況を1か所で閲覧できる場を提供しています。これにより、スタッフはどのタスクが自分に割り当てられたのかが明確にわかり、新しい仕事がパイプラインを流れて来た通知を受け取ることもできます。
2. プロジェクトの企画
プロジェクト管理ボードは、整理の達人たちが現在と今後のプロジェクトのスコープを理解し、企画するのに役立ちます。
ボードにある最初の2つのリストは、通常のバックログとして使われるのではなく、資料とチームからの質問やチームへの質問を参照する場として機能します。次に、ボードは通常のカンバンワークフローに移行し、プロジェクトマネージャーは簡単にタスクを作ったり、誰がいつ、どのプロジェクトに取り掛かっているのか把握したりできます。
プロジェクトマネージャーはこのボードを使い、チームが時間通りにタスクに取り組んでいることを確認するために、1つ以上のプロジェクトを追跡できます。
3. 営業パイプラインの管理
カンバンボードはプロジェクト管理以外のプロセスのサポートにも使えます。多くの組織が、この手法(およびTrello)を営業パイプラインの管理に使っています。例えば、自転車と部品の販売と修理を行うMike’s Bikesでは、営業サイクルを最初から最後まで追跡するのにTrelloのカンバンボードを使っています。
Jotformとの統合により、顧客は自動的にカードとして「新規問い合わせ」リストに加えられ、チームメンバーの対応に応じて、パイプラインでの状況を基盤とするワークフローを移動して行きます。チームは様々なリストを一目見るだけで、顧客が注文を保留しているのか、フォローアップが必要なのかすぐにわかります。組み立てが終わると、顧客カードを「終了」リスト(ピカピカの新しい自転車に乗って立ち去ったリストとも呼ばれる)に移動します。
リスト名は簡単に変えられるので、Mike’s BikesのTrelloボードのように、チームは内輪受けする名前や会社カルチャーに合う名前にカスタマイズして楽しむことができます。
4. 旅行の計画
旅行の前に歯ブラシを荷物に入れたり、必ず訪れるべきレストランの予約を忘れたりしたことは一度や二度ではないはず。
次の旅行の日程表を作っている時、これらのような項目は、大なり小なり忘れてしまうことが多いものです。この旅行計画ボードを使い、旅行の準備にしなければならないタスクを「To Do」リストに加え、それぞれが完了したらワークフローに沿って移動させることで、旅行に必要なあらゆることを管理しましょう。
ボードを沢山のカードで散らかしたくなければ、ひとつのカードの中に「チェックリスト」を作ることもできます。例えば、荷造り専用のカードにチェックリストを加えて、必要な物を忘れないようにします(絶対に着ないのにいつも荷物に入れてしまうシャツなんかもチェックしましょう)。
5. 海外旅行に向けた新しい言語の学習
新しい言語を学ぶには、地道に練習し続けることが肝心です。一刻も早くポルトガル語がペラペラになりたいのかもしれませんが、正直言ってそれは無理というもの。この言語を学ぶボードは、上達目標を達成可能な小さな目標に分割することでやる気を引き出します 。
言語学習サイトのデュオリンゴから発想を得て、このボードはカンバン方式で上達度を追跡します。「To Do」や「Do」そして「Done」リストは、学ぶ言語とその文化にどっぷり浸る計画を手助けします。追加した「これから学ぶ」および「学んだ」リストは、実際の学習やレッスンを追跡するのに役立ちます。このボードを使えば、どれだけ上達したかを追跡でき、カードが全部「Done」リストに移動した頃には、地方の訛りさえも身につけているかもしれません。
カンバンで高い生産性を維持する方法
個人またはチーム向けカンバン方式の目的は、仕事量に圧倒されないように働くことです。もしチームが全体像を見ることができず、メールや書類のように密室で当事者だけが会話する(つまらない)状況であれば、カンバン方式と同レベルの透明性とコミュニケーションを達成するのは困難です。
プロジェクトを取り組みやすい大きさのタスクに細分化し、WIPを制限することで、チームは特定のプロジェクトで何が機能し、何がしていないのかを素早く把握できる能力を与えられます。タスクがボトルネックになったり、特定のチームメンバーに助けが必要になったりした場合は、ボードの視覚的特徴により、プロセスのどの部分を改善する必要があるのかを誰もが明白に把握することができます。
その上、ボード上でカードを動かすのはとても楽しく、タスクが完了する度にちょっとしたお祝いが待っています🍾
チームの生産性レベルのギアを上げる新しい方法を探している場合、あるいは単に私的プロジェクトをよく整理したいだけでも、カンバンが実現してくれます。
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